図書館が収集・蓄積する情報の有効利用

リアル書店の店員さんならやらないような失敗です。電子メールで大量に送る商品情報ですから、コストは問題にならないのでしょうが、それですっかり、わたしはAmazonからの宣伝メールを読まなくなりました。さて、ここまでの話をふまえて、無料ビジネスの面で進んでいるのは、紙の本か電子書籍か。両方の意見がありそうですが、わたしは、現在の日本では、まだリアル書店のほうが進んだ無料ビジネスをしているとみます。日本では、電子書籍の無料より、リアル書店の立ち読み無料のほうが。情報戦略として優位にあると感じるからです。

ここで、出版ビジネスの情報戦略について、隠れた大きな問題点を指摘しておきましょう。無料とも大きな関わりがあることです。ただし、無料ビジネスではありません。本を無料で貸し出す図書館のことです。近年、図書館のなかには、出版社や著者が顔をしかめざるをえないやり方を平気でやるところが出てきて、「図書館問題」といえる問題を引き起こしています。ハリー・ポッターのシリーズのように、最初から人気が高いことがわかっている新刊を、ひとつの図書館が数十冊(たとえば50冊とか)まとめて買って、どんどん貸し出す。また、新聞広告などでの新刊の宣伝がまだおこなわれていない段階から、図書館が新刊情報を流して、予約を受け付ける。

通常の新刊販売に明らかな悪影響をもつことでも、遠慮なくやる図書館が出てきているのです。もちろん、人気新刊の大量購入のような問題は、出版社や著者にとって対策を考えるべき問題のひとつでしょう。ただし本書では、この問題については深入りしないことにします。わたしは、「真の図書館問題」は別にあると考えます。図書館は、無料で本を貸し出すことで、大量の顧客情報を収集しています。TSUTAYAを例に説明したように、なにかを貸す取引は金融(ファイナンス)の要素をもちます。だからTSUTAYAは高いレベルの顧客情報を確実に収集できて、Tカードを通じてTSUTAYAが蓄積した顧客情報を活用できる企業(たとえばファミリーマート)は、きめ細かな販売促進ができます。