変革迫られる卸売市場

生鮮食品や花の流通を支える卸売市場の機能が低下している。

市場外流通の比率が高まり、卸会社や仲卸会社の廃業が増加の一途をたどっている。市場自体も集荷力の弱い地方卸売市場の休廃業や中央卸売市場の地方卸売市場への「降格」が相次いでいる。

農水省の推計によると、生鮮食品流通に占める卸売市場経由率は2003年度で青果物が69.5%、水産物が63.2%、食肉11.4%となった。いずれも10年前の1993年に比べて6―7ポイント低下している。

東京都が3月にまとめた都中央卸売市場に入居する仲卸からの報告「仲卸業者の経営状況」によると、05年末で仲卸の数は1424社。2つの市場を移転・統合した大田市場が開業した89年との比較で20.6%減った。さらに、営業を続けている仲卸の43.8%が経常赤字となり、黒字業者の比率が年々低下している。東京の市場でこのような状況なので、地方の市場は推して知るべしである。

卸売市場といえば、当日のセリ取引を待って品ぞろえをしていたのではスーパーの開店時間に間に合わない、産地から荷物を積んだ大型トラックが同じ時間に集中して排気ガスや騒音の問題を招く――など、「市場外流通のほうが効率的」との指摘もある。

今なお残る卸売市場の存在意義はどうか。ひとつは、市場外流通も参考にしている日々形成される取引価格=価格指標である。生鮮食品流通の地域特性や地産地消が注目を集めている現在、東京の価格指標だけあればこと足りるという状況ではない。

卸売市場に出荷する生産者からみると、代金回収システムとしての卸売市場には今なお魅力がある。市場外流通では出荷した1カ月後の決済も多いのに対し、卸売市場で買い手がつけば3日後に代金が回収できる。

卸売市場の機能低下や卸・仲卸の経営環境悪化の主因は、市場外流通の変化に対して卸売市場法の下での規制改革の遅れや事業者の意識・対応の遅れがあったことは否めない。

卸売市場法は99年と2004年の2度の大きな改正を経て、市場取引の公正・公平と引き換えに設けられていたさまざまな規制が緩和された。09年度には委託卸売手数料が自由化され、法改正に伴う規制緩和は一巡する。

各地の卸売市場で生き残りをかけた市場取引活性化の試みがなされているが、生鮮流通の変革の速さに比べれば法改正による規制緩和の歩みは遅い。最近、消費者の関心が高まっているトレーサビリティー(生産履歴の追跡)にどう対応するかなど卸売市場にさらなる変革を迫る課題も多い。市場関係者に求められる変革の努力だけでなく、卸売市場法も、もう一度見直す必要が生じているのかもしれない。