外国企業の株式事務取り扱い

昭和五十七年の商法改正により、同年十月から株式の単位の引き上げが行われ、既存会社については、経過措置として「単位株制度」が設けられ、単位未満株式にさまざまな制限がっけられる一方、その処分方法として、会社に対する買取請求制度が設けられました。受託銀行は、この買取請求事務も取り扱っています。

戦後、わが国経済の発展に伴って、国際間の交流が活発になりましたが、株式や社債についてもその例外ではありません。しかし初期の段階では、わが国に資本の蓄積が少なかったため、外国で社債を発行してその資金を取り入れるとか、わが国の会社の知名度を高めるために、外国の株式市場に上場したり、新株を発行したりする方が多かったのです。やがて、外貨もだんだんとたまり、またいわゆる資本の自由化について内外の要望が高まり、今度はわが国で外国会社が社債を発行するとか、発展途上国へ援助のため資金を貸し出したりナるようになり、ついに昭和四十八年十二月から外国企業が東京証券取引所に株式を上場することとなりました。

ところで、外国株を上場する場合には、外国株そのものによるのと、外国株に代わってそれに相当する証券を国内で発行してこれによるのと二通りの方法があります。わが国の企業が外国で上場の場合はほとんど後者の例で、ソニーが昭和三十六年六月に初めてニューヨークで新株式を発行したときは、ソニー株十株(額面五百円)を一ADR株として売り出しました。このADR証券はアメリカの証券で、ソニーの原株式はわが国の東京銀行が保管し、その証明にもとづいて、モルガンーギャランティー・トラスト社から発行されたものです。ロンドン市場ではLDR、ヨーロッパ市場ではEDRなど、それぞれの国でその国の証券として発行され、売買されています。

これに対して、外国証券そのままで上場する例は、ヨーロッパ大陸各国間のように簡単に往来でき、株券の現物も持ち運べる場合に普通行われています。わが国の場合、この二方法につきいろいろ議論した結果、ADRに準ずるJDR証券の発行については法制的にも検討すべき点が多く時期尚早、といって外国株式のままでは現物の受け渡しが困難であることから、建前は外国株式の上場だが、実際の取引は振替決済制度に限ることに決まりました。