中国が抱える三つの課題

アメリカでは「中国脅威論」が花盛りだ。「いつ中国に抜かされるか?」というよりも「もうすでに中国の天下だ」といった悲観的な論調が支配的である。2011年春の「世界の見方についての調査」(ピュー・リサーチ)で、世界中の数千人に「世界一の経済大国はどこだと思うか?」という質問をした。それに対してアメリカ人の43パーセントは「中国」だと答えている。「アメリカ」だと答えたのは38パーセントしかいなかったそうだ。一方で、中国人の半分がアメリカが世界ごと答えた、ということだ(英エコノミスト誌2011年12月31日付記事)。

アメリカでは中国についての小話がちまたにあふれている。例えば「我々が中国に軍事的に対抗するためには、金が必要だ。早く中国に借りにいこう」などという自虐的な?ものなどがある。とにかく、アメリカの知識人の潜在意識の中では「中国」という名前が、非常に大きな地位を占めるようになっている。しかし、現実にはそう簡単に中国がアメリカを抜き去り、天下を取るということはないように思える。一つには資源の問題がある。これまで中国経済が毎年大きく成長してきたのには、労働力、エネルギー、食糧の三つが順調に増えてきたのが貢献している。しかしこれらを今後も続けて確保するのは容易ではない。

まず中国は1人っ子政策を採ってきたので、日本と同様に高齢化社会が必ずやってくる。人口の多い国なので、労働者の絶対数はあまり問題にならないかもしれないが、それでも質の高い労働者の減少や、健康保険や年金などといった日本と同様な問題が起きるだろう。それにより成長が阻害されることが考えられる。中国政府が最も心配しているのは食糧やエネルギーだ。中国は石油があまり取れないし、砂漠が多く水が不足しがちな土地柄なので農業も結構苦しい面がある。そこでこれらの資源を海外に出ていって調達しないとならない。すでに、中国は石油の輸入が世界2位、石炭の輸入は世界1位、大豆の輸入は世界1位というような資源輸入大国になっている。

なので、中国にとって外交とは第一に資源外交なのである。13億人を養っていくためには世界で資源を確保することが何よりも大事、ということだ。最近アフリカ諸国に中国が積極的に進出しているが、その狙いも、ズバリ資源だ。この前もガーナから来た人に会ったときに「最近、ガーナに中国人がいっぱい来ているよ。日本人に会ったことはないけどね」などと言われたが、そこには中国政府の深謀遠慮があることを理解しておく必要がある。二つ目としては、バブル及び景気サイクルの問題がある。

中国ではこのところ不動産のバブル崩壊が起きているのではないか、と言われている。確かに、賃料や人々の収入に比べて売買価格が割高であること、空室率が高いこと、中国政府が不動産関係の融資を絞るようになったことなどを見ると、不動産価格の修正はいつ起きても不思議はないように考えられる。私は、何人かの中国人不動産投資家に「収益性が見合わない価格がついている物件の価格は下がると考えるべき」というお話をしてきた。でも、その人たちから「中国の不動産は絶対下がらない」というお話を聞くことが多かった。個人的にちょっと心配なところだ。